札差関係資料

概要

解説

 江戸幕府の旗本や御家人に支給される俸禄米の受取・売却を請け負った「札差」と呼ばれる商人に関する資料。

 一橋大学附属図書館では、複数の個人から寄贈された札差に関する資料および古書店から購入した札差に関する資料を「札差関係資料」と総称している。未整理の古文書があるため総点数は明らかでないが、整理済みの資料は248点を数える。整理にあたっては出所原則を尊重し、出所毎に分類した。

 札差関係資料の中でもっとも広く知られているのは、札差仲間が成立した享保9年 (1724) から文化12年 (1815) までの札差仲間に関する文書類を編纂した『札差事略』であろう。『札差事略』は最初に35巻38冊の札差会所備付本が作成され、それを底本に仲間組合の一番組~六番組用に6部が作成された。現存しているのは札差会所備付本 (完本)・一番組本 (完本) ・四番組本 (11冊のみ) ・五番組本 (12冊のみ) の4部で、一橋大学附属図書館はそのうち札差会所備付本・一番組本・五番組本の3部を所蔵している。

伝来

 一橋大学附属図書館が所蔵する札差関係資料は、8つの出所から10度にわたる寄贈・購入を経て形成された。

 札差関係資料の伝来は以下の通りである。

  1. 青地家旧蔵資料
    一橋大学の前身である高等商業学校を経て明治34年 (1901) に高等商業学校専攻部を卒業した青地玄三郎氏より、大正4年 (1915) 1月21日・昭和8年 (1933) 6月12日の二度に分けて寄贈された。第1回目には『札差事略』五番組本1点、第2回目には伊勢屋幾次郎家・伊勢屋惣次郎家・伊勢屋惣右衛門家の経営資料184点が寄贈されている。伊勢屋幾次郎家・伊勢屋惣次郎家・伊勢屋惣右衛門家はいずれも青地姓であるが、青地氏が複数の札差の経営資料を寄贈した経緯は詳らかでない。
  2. 伊藤家旧蔵資料
    旧札差和泉屋源兵衛家出身の伊藤賢氏より、大正4年 (1915) 6月29日・昭和10年 (1935) 10月1日の二度に分けて寄贈された。第1回目には『札差事略』札差会所備付本を始め札差仲間関係の資料35点、第2回目には伊勢屋幾次郎家の経営資料19点が寄贈されている。和泉屋源兵衛家出身の伊藤氏が伊勢屋幾次郎家の経営資料を寄贈した経緯は不明である。
  3. 出口家旧蔵資料
    旧札差伊勢屋清七家出身の出口清七氏より、大正4年 (1915) 6月29日に寄贈された。『札差事略』一番組本及び幕府米蔵の歴史を記した『御蔵之始末』の計2点。
  4. 細谷家旧蔵資料
    旧札差和泉屋多七家出身の細谷多七氏より、大正4年 (1915) 4月28日に寄贈された。元治2年 (慶応元年、1865) 当時の札差仲間の一覧表『御蔵御場所見廻組合割付』および細谷氏自身の手になる札差仲間解説資料2点の計3点。
  5. 村林家旧蔵資料
    旧札差伊勢屋四郎兵衛家出身の村林専之助東京商科大学附属商学専門部助教授 (当時) より、昭和8年 (1933) 10月23日に寄贈された。『御張紙之控』1点。なお、父の建蔵も商法講習所~高等商業学校で教鞭を執っている。
  6. 購入資料
    明治35年 (1902) 6月6日、大正7年 (1918) 8月6日、同8年 (1919) 7月28日に1点ずつ購入。いずれも旧蔵者は不明。便宜上「購入資料」として一括した。

整理の経緯

 札差関係資料は貴重資料の一部として貴:xxという請求記号が付与されていたが、デジタルアーカイブに収録するにあたって新たに出所毎に分類した。その他、整理に関して特記すべき事項は以下の通りである。

  • 貴:289の古文書は内容によって分類がなされ、一部は軸装されている。分類および軸装の経緯は不明である。
  • 貴:298の古文書は立正大学 (当時) の北原進氏・住友史料館 (当時) の末岡照啓氏によって整理された。

階層構造

 上記の伝来1~6をサブフォンドに設定し、青地家旧蔵資料と伊藤家旧蔵資料についてはシリーズとして仲間関係・経営関係を設定した。

札差階層構造

伝来3~6はシリーズを設定しなかった。その理由は以下の通りである。

  • それぞれ点数が1~3点しかない。
  • 「3 出口家旧蔵資料」と「4 細谷家旧蔵資料」は仲間関係しか含まない。
  • 「5 村林家旧蔵資料」は経営関係しか含まない。
  • 「6 購入資料」は仲間関係・経営関係のいずれも含むが、旧蔵者が判明しておらず、出所が同一・別個のいずれとも判断しがたい。

資料リスト・画像へのリンク

関連情報

図書・論文

  • 幸田成友 「札差」 『三田学会雑誌』 9-8~9、1915年
  • 幸田成友 「札差雑考」 『史学』 7-1~2、1928年
  • 幸田成友 「札差事略と其著者」 『商学研究』 8-2、1928年
    ※以上3点は、『幸田成友著作集』 第1巻、中央公論社、1971年所収
  • 『東京市史稿 産業篇』 東京都、1935年~
  • 『札差事略』 一橋大学札差事略刊行会、1965~1967年
  • 杉本悦 「札差之研究」 (大正15年東京商科大学卒業論文)
  • 玉置重男 「札差伊勢屋惣右衛門の諸帳面」 (昭和9年東京商科大学卒業論文)
  • 北原進 『江戸の札差』 吉川弘文館、1985年

所在

附属図書館 貴重資料室 【貴:33ほか】