平成18年度一橋大学附属図書館企画展示
江戸時代の豪農と地域社会 : 岡田家文書の世界

地主経営と帳簿作成 [展示ケース4,5]

19世紀、岡田家は周辺村落の土地も所有する岡村第一の地主であった。岡田家の所持地を耕作し、小作料を納める百姓は膨大な数にのぼる。飢饉や米・綿の価格変動などの影響を受けて、彼らとの関係は不断に変化する。岡田家文書の帳簿類から、その様相を眺めてみよう。

「下作宛口帳」は、小作人ごとに小作地と勘定を記した地主経営の基本台帳である。小作料の未納にともなう複数年度での決済が増加する中で、3年分を1冊で把握できる文政13(1830)年の帳簿が作成された。小作人たちとの関係は単年度では完結しない。新たな帳簿には前の帳簿の内容が繰り越され、照合を示す「写」印が付される。

また、未納小作料額を把握するための「未進帳」、小作地の位置や規模などをまとめた「田畑畝高宛口帳」など、岡田家は多様な帳簿を作成している。帳簿間の数値は、「合」印によって整合性が表現される。その時々の課題に応じた帳簿作成と記載の正確性が、岡田家の地主経営を支えていたのである。


出品資料
〈コラム: 小作とは〉

地主の所持地を借りて耕作し、その使用料を支払う農業経営形態を小作という。近世においては、農業生産力の発展や商品生産・貨幣経済の浸透を背景として、中期以降に質地小作の形態が広く展開する。質地小作には、質入主がその質入地を耕作し、地主に小作料を払うもの(直小作)と、質入主以外のものに耕作させる(別小作)がある。小作料は、独自に設定された宛口高を基準に換算される。以下に、具体的な例をみてみよう。

<天保9(1838)年、岡村南株・太右衛門の場合>

宛口高からの控除分は、村ごとに作柄を勘案して決定される。また貨幣換算レートは、毎年の相場によって変動する。岡田家と小作人の関係は様々な要素に規定されており、不断に変化しているのである。



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