複式簿記がやってきた!

明治初期簿記導入史と商法講習所

ホイトニーとその周辺の簿記書

初期の商法講習所の教科書の多くは、W.C. Whitney がアメリカで経営していた連鎖商業学校で使っていたものをそのまま用いていた。
書  名 = Manual of theoretical training in the science of accounts = 商用簿記法初歩
版表示  = [Private reproduction]
出版事項 = Tokyo : M. Yamatoya , The 10th year of Meidzi [1877]
形  態 = x, 47p
128074099/ 国立 書庫 Nishikawa***15**

内容:全文英文。標題紙のみ「商用簿記法初歩」と邦題がある。冒頭の「生徒に対する注意」、「教師と生徒に対するヒント」のほか簿記に関する4章と練習問題から成る。 
      各頁欄外には一つずつ格言が掲げられている。
成立、出版:一橋大図所蔵の資料は複製。原本の国内の所蔵については未調査(NACSISの目録で他館の所蔵はなし)。出版は明治10年。出版者は、標題紙
に M..Yamatoya  とあり、銀座の書肆大和屋松之助。奥付には大和屋と思われる部分に上貼りして、
     「出版発行 西宮松之助」とある。標題紙、奥付に「太政官文庫」の蔵書印あり。

この本には著者名が記されていないが、西川氏は「W.C.ホイトニーと簿記」中で 「(前略)とも角当時日本でこの様な本を書く人は、彼の外にはいなかったし、その
他種々
の点から私はこれは彼の著書に相違ないと信じている。」と記し、「日本簿記史談」323頁でもその理由について触れている。

しかし、アメリカの議会図書館に本書と同名の資料が所蔵されており、著者はPackardとなっていることが判明し、西川氏は、アメリカからこの複製を取り寄せ、ホイトニー出版の原本であることを確認した。
書  名 = Manual of theoretical training in the science of accounts :prepared for use in, and respectfully dedicated to, the several institutions comprised in the International Business College Association / by S.S. Packard
版表示  = [Private reproduction]
出版事項 = New York : The author , 1868
形  態 = vi, [7]-47 p. ; 22 cm
著  者 = Packard, Silas Sadler, 1826-1898 <DA02798212>
[ 所蔵事項 ]
128074100N 国立 書庫 Nishikawa***338**

パッカード(Silas Sadler Packard, 1826-1898)
連鎖商業学校の一つNew York Mercantile College の校長。ブライアント、ストラットンの簿記書の共著者として名前が見られる。

なお、明治13年商法講習所規則書に「フオルサン著 商用簿記法初歩」とある。ホイトニーはフオルサンことフォルソムを高く評価しており、両者は非常に親密な関係であった。ホイトニー門下がフォルソムから受けた影響は非常に大きい。

フォルソム  Folsom, Ezekiel Gilman  (1821-1897)
1851年オハイオ州クリーブランドでThe Mercantile Collegeを開設。初期の学生にブライアントとストラットンがいる。1857年両名が連鎖商業学校を創設した際にこれに参加し、ニューヨークでThe Albany Bryant & Stratton College を経営した。主著である "The Logic of Accounts" を完成させたのはこの時代である。彼の価値受渡説はホイトニーから彼の弟子たちへと伝わり、取引要素説に結びついた。

書  名 =The logic of accounts; A new exposition of the theory and practice of double-entry bookkeeping based in value, as being of two primary classes, commercial and ideal; and reducing all their exchanges to nine equations and thirteen results / by E.G. Folsom
別書名  = OH:Folsom's logical bookkeeping
出版事項 = New York ; Chicago : A.S. Barnes , 1873
形  態 = xvi, 443 p. ; 21 cm
注  記 = At head of title: Folsom's logical bookkeeping
       "Illustrated by examples and memoranda for students and business men"
著  者 = *Folsom, Ezekiel Gilman
統一書名 = Folsom's logical bookkeeping
[ 所蔵事項 ]*Ee**99**、*Ee**99*A*

内容:全16章から成る。そのうち第1章から第6章で述べられている原理論が注目される。
Folsomは価値を商業価値系統(Commercial Value)と観念価値系統(Ideal Value)に分けて分析し、価値の交換についての9つの価値均衡等式(The Nine Equation)を導き出した。それらは「取引要素説」として明治の簿記史に影響を与えた。
その他:「東京商法講習所之印」あり

ホイトニーのもとで学んだ日本人たちの中から、フォルソムの訳書や、その影響を受けた著書が次々と生まれた。

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