複式簿記がやってきた!

明治初期簿記導入史と商法講習所

商家必用

<書誌事項>
書名 = 商家必用, 2巻 / 加藤斌譯
別書名 =OH:商家必用 : 記簿法
出版事項 = 東京 : 村上勘兵衛 , 1873.10
形  態 = 2冊 ; 23cm
注  記 = 題簽標題: 商家必用 : 記簿法
William Inglis著 Book-keeping by single & double entry の抄訳
著  者 = Inglis, William
      加藤, 斌<カトウ, ナカバ>
[ 所蔵事項 ] Nishikawa-3


<内容>
 『帳合之法』についで日本で二番目に出版された西洋簿記書。
 イギリス系簿記書の翻訳としては第一番目のものであり、固定資産減価償却、貸借対照表の例示で有名。
 『帳合之法』から遅れることわずか4ヶ月なので、訳者加藤はこれを参照していないと思われるが、帳簿の数字を縦書きにした点など、一致している。西川先生はこの両書の対照に注目している。

<原著> William Inglis ; Book-keeping by single and double entry, with an Appendix Containing Explanations of Mercantile Terms and Transactions, Questions in Book-keeping, & c. W. & Chambers. London & Edinburgh, 1872
 Chambers’s Educational Courses の中の1冊である。
 チェンバース教育叢書は明治以前から日本に入って翻訳され、知名度が高かった。初期の学校教科書となったものも多く、本書も翻訳後小学校教科書として広まった。
 Book-keeping by single and double entry etc.は、1849初版で、数度版を重ねているが、商家必用の底本となったのは、1872年版である。
 イギリス系ではあるが、「残高勘定」を採用するなどBalance Sheetの様式が「英国式」ではなく「大陸式」である、などの特徴がある。


<著者・訳者>

訳者 加藤斌<なかば>(1844-1914) 【右写真】 katou, nakaba
 越前福井の生まれで幼名溝口辰五郎。幼時より橋本左内に親しく師事し、蘭学を学んだ。『商家必用』序文の執筆者の一人は、旧福井藩主松平慶永(春獄)で、大名自筆の序文は珍しい。
維新後は横浜で英語を習得しながら貿易にも通じるようになる。のちに工部省に入って工学寮の学監となり、この頃『商家必用』を著わした。その後海軍省に移り、退官後は横浜正金銀行等の事業に関係した。著書に『独逸海上保険法』(1879)がある。

著者 William Inglis
ほかに Farm Book-keeping. W. & Chambers. London & Edinburgh, [1866] (Chambers’s Educational Courses)などの著書がある。

<成立と出版>
 初編明治6(1873)年10月、再版10(1877)年1月、二編10年4月に刊行された。初編は、東京の書肆村上勘兵衛ほか大阪、京都の書肆計10箇所から発売された。
初編、二編の見返し、初編の版心に新民社蔵版の文字と押印あり。


商家必用 帳合之法 原語
勘定記方ブックキーピング
帳面記方
帳合之法 book-keeping<簿記>
単認 略式シングル・エンタリ single-entry<単式>
複認 本式ドップル・エンタリ double-entry<複式>
勘定アクコオント 勘定エッカヲント account
懸売帳 日記帳デイブック day book
仕切帳 大帳レヂャル ledger<元帳>
現金帳 金銀出納帳ケシブック cash book<現金出納帳>
中仕切帳 清書帳ジョルナル journal<仕訳帳>
仮差引 平均改トライヤル・バランス trial balance<試算表>
差引見認表 平均表バランス・シイト balance sheet<貸借対照表>
借方 借デビト debit<借方>
貸方 貸ケレヂト credit<貸方>
『日本簿記学生成史』45pの表より作成

右は、松平慶永(春嶽)の序
松平慶永(1828〜1890 文政11年〜明治23年)

福井藩主。春嶽と号す。有能な人材を門閥にとらわれず登用、開明的な政策をとり名君と称された。将軍継嗣問題では一橋慶喜を推すが、井伊直弼により隠居・謹慎を命じられ、江戸霊岸島に幽閉される。1862年勅旨により政事総裁職として慶喜とともに復帰。慶喜の文久幕政改革をたすけ、世界との通商による日本の富国強兵を主張した。王政復古後は、幕府と朝廷の間に立って慶喜の政権参加に尽力。明治新政府の議定、大蔵卿など要職を担った。

shoukahitsuyou
shoukahitsuyou
shoukahitsuyou



<参考文献>
『近代会計百年?その歩みと文献目録』日本会計研究学会1978.11,140頁
『日本簿記学生成史』 雄松堂書店 1982.6,35?48頁
『商家必用』 (復刻叢書 簿記ことはじめ 2)雄松堂書店1979.9
西川孝治郎「忘れられたる「商家必用」に就いて」『会計』1940.9,97?104頁
西川孝治郎「我国第二の簿記書商家必用?発刊八十年に当つて」『企業会計』1953.12,
140?143頁
次へ
top
Copyright(c) Hitotsubashi University Library 2003