日・EUフレンドシップウィーク企画展示
EUの公用語

ギリシア語

現在のギリシア共和国およびキプロス共和国で話されている言葉を学ぶには、『ギリシア語入門』ではなく、『現代ギリシア語入門』のような書名の本を使います。単に「ギリシア語」というと古典ギリシア語(紀元前5〜前4世紀のアッティカ方言を標準とする古代ギリシア語)を指す場合が多いのですが、現代のギリシア語は、二千五百年も昔の言葉とは当然ずいぶん異なっています。

現代ギリシア語には、文語的な「純正語(καθαρευουσα カサレヴサ)」と、口語を受け継いだ「民衆語(δημοτικη デモティキ)」との二種類があり、ギリシア共和国ではデモティキのみが正式な公用語と定められていますが、カサレヴサのほうも司法、保守的階層、ギリシア正教会等で権威ある言語として依然として使用され続け、デモティキと並存しているのが現状です。

「ヘレニズム時代のアッティカ方言を模倣し,現代において文献上の言語になってしまっている擬古文体(καθαρευουσα)と,一般の人たちが日常の生活で使っている口語体(δημοτικη)の両方を使う2言語問題があります。この歴史は非常に古く,すでにビザンティン期から存在していました。ところが,1453年以来約400年間に及ぶトルコによる政治支配から離れる頃,擬古文体をある程度自由に駆使することができたギリシア人政治家や役人たちにより,新生ギリシア国家の記述国語はいつの間にか擬古文体になってしまいました。口語体との間には文法や語いの違いがかなりあるため,日常生活で話されている口語体こそが,ギリシア人のエネルギーを直接的に表現できる唯一の記述言語であると主張する口語体支持者が,当然のことながら現れました。どちらを公用語,教育語として採用するかということは,ギリシア国内において長い間最も深刻なテーマでした。しかし近頃では公文書,文学作品,雑誌や新聞の記事,放送,大学にまで及ぶ教育機関では,口語体が用いられるようになっています。」
(荒木英世『現代ギリシア語の入門』東京 : 白水社, 1990, p.165)


一橋大学附属図書館 学術・企画主担当