日・EUフレンドシップウィーク企画展示
EUの公用語

フィンランド語

フィンランド語はウラル語族のフィン・ウゴル語派のバルト・フィン諸語に属します。名詞は格(主格、属格、対格、分格、様格、変格、内格、出格、入格、所格、向格、離格、欠格、共格、具格の15種類、あるいは、説明の仕方によっては14種類)に従って語形変化します。

「スウェーデン時代と大公国時代について「数百年の長きにわたる他国による支配」といった捉え方をする文献が日本では多い。しかしながら厳密に言えば,「他国による支配」という概念は「自国」が存在してはじめて可能になるものである。その意味で,スウェーデン編入時にも,またロシアへの割譲時にも国家を形成していなかったフィンランドについて,「他国であるスウェーデンやロシアによる不当な支配」といった記述をすることは不正確なものであり、誤解を与える可能性も高い。」
(吉田欣吾「フィンランドにおける言語と統合 : フィンランド語とスウェーデン語によるフィンランド」. 岡澤憲芙, 村井誠人(編著)『北欧世界のことばと文化』東京 : 成文堂, 2007.1 (世界のことばと文化シリーズ), p.164-184 より p.167-168)
「  言語は,その系統により分類することが可能である。同じ祖先を共有する人間集団を家族や血族と呼ぶのと同様に,同じ言語を祖先(祖語)として共有すると考えられる言語集団を語族と呼ぶ。
  ヨーロッパの多くの言語はインド・ヨーロッパ語族に属している。スウェーデン語,ノルウェー語,デンマーク語など北欧の諸言語も同語族に属し,英語やドイツ語などとも比較的近い系統関係を持っている。いっぽう,フィンランド語はウラル語族に属するとされるが,同語族に属する言語としてヨーロッパではハンガリー語やエストニア語を挙げることができる。ウラル語族に属する言語の多くはロシアに存在しているが,その分布は遠くアジアのシベリアにまで及んでいる。
  しかしながら,語族の壁を越えた言語どうしの接触もしばしば起こっており,言語はさまざまなレベルでの変化を経験している。言語は変化するからこそ言語であるとも言える。その意味では,言語を系統関係によって分類することは一定の意味を持つにしても,それにより言語の起源を一ヶ所にのみ求めようとすることは危険である。
  フィンランド語もウラル語族に分類されながら,いっぽうではインド・ヨーロッパ語族の影響を強く受けながら成立してきた言語である。いずれにしても,「フィンランド語はどこから来たのか」という問いを立てることはまちがっている。というのも,フィンランド語はフィンランドにおいて成立した言語であるからである。したがって,多くの日本語文献において実際にしばしば行われていることだが,フィンランド語を「アジア系の言語」と紹介することは大きな誤解をもたらす可能性がある。」
(吉田欣吾「フィンランドにおける言語と統合」. 岡澤憲芙, 村井誠人(編著)『北欧世界のことばと文化』東京 : 成文堂, 2007.1 (世界のことばと文化シリーズ), p.164-184 より p.168)
「  一般的に,人間を生物学的特徴により分類したものが「人種」,文化的特徴により分類したものが「民族」であるとされている。これらの概念・用語が多くの問題を含むものであることがしばしば指摘されるいっぽう,軽率に使われることも少なくない。
  日本におけるフィンランドに関する記述で目立つのは,フィンランド語がアジア系の言語であり,フィンランド人がアジア系の人種/民族であるとするものである。そもそもある集団の起源を一つに求めること自体が時代錯誤的態度である ... 。
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  「人種」と同様に「民族」というものが歴史的に生み出される主観的範疇なのだとすれば,「フィンランド民族はどこから来たのか」という,実際しばしば繰り返される問いは意味を成さない。それは「フィンランド語はどこから来たのか」という問いが意味を成さないのと同じである。「フィンランド語」と同様に「フィンランド民族」はフィンランドにおいて誕生したのであり,フィンランド人は「ヨーロッパの民族」ではあっても「アジアの民族」ではあり得ない。」
(吉田欣吾「フィンランドにおける言語と統合」. 岡澤憲芙, 村井誠人(編著)『北欧世界のことばと文化』東京 : 成文堂, 2007.1 (世界のことばと文化シリーズ), p.164-184 より p.172-173)
「  法制度の根幹を成す「フィンランド憲法」においては,第17条「自らの言語と文化に対する権利」が重要である。そこでは,フィンランド語とスウェーデン語が国語であること,両言語系住民の文化的・社会的要望に,同等の基準に基づいて対処すべきであることが規定されている。さらにサーミ人やロマ人,あるいは他の集団が自らの言語と文化を維持する権利を有していること,また手話を使用する者の権利が法により保障されることなどが規定されている。
... 。
  その他,教育,教会,図書館,マス・メディア,保健,医療,福祉などに関する法において,個人の母語に対する権利を保障しようとする規定が見つかる。さらには消費財に関して与えられるべき情報,製品の包装表示,国防軍,郵便事業などに関する法律においても,言語に関して何らかの規定が設けられており,言語に関わる法規定は多数にのぼる。」
(吉田欣吾「フィンランドにおける言語と統合」. 岡澤憲芙, 村井誠人(編著)『北欧世界のことばと文化』東京 : 成文堂, 2007.1 (世界のことばと文化シリーズ), p.164-184 より p.181)


一橋大学附属図書館 学術・企画主担当