一橋大学附属図書館企画展示
マーシャルとシュンペーターの遺産

   The Schumpeter Library   


「シュムペーター文庫」

一橋大学附属図書館は、シュンペーターがハーヴァード大学時代に収集した資料の一部を「シュムペーター文庫」として所蔵している。愛弟子であった中山伊知郎、都留重人が一橋大学に在籍しており、また、シュンペーター夫人エリザベス(1898.8.16-1953.7.17)が日本経済の研究家でもあったことと関連して同夫人の遺言により本学に寄贈されたものである。単行書1,353冊、世界各国の経済関係の雑誌(未製本)2,835冊、小冊子(主として各国の研究者からシュンペーターに贈られた論文の抜刷)1,513冊、合計5,701冊が、1955(昭和30)年2月28日、アメリカ大使館文化アタッシェのグレン・ショーから当時の中山伊知郎学長に手渡された。

附属図書館は当文庫の整理を行い、文庫目録として1962年に The catalogue of Prof. Schumpeter Library を刊行、追録 Additions to The Schumpeter Library (1967)ともども、現在附属図書館のウェブサイトにて公開している。ドイツでシュンペーターに師事した東畑精一は、この目録に寄稿した「由来記」で、以下のようなエピソードも交えつつ、寄贈の経緯を記している――贈呈式が行われた一橋大学の本館の特別応接室は、昭和6年に講演後のシュンペーターを囲んで歓談のひとときを持った室でもあって、あの時の室の寒さはシュンペーターを少しばかりたじろがせたかもしれなかったが、氏はそれを気にしている当時の教授たちに、「大学は建てものではない」と言ってのけた。そして例えばイタリアのボロニア大学とかその他の例をひいて、その貧弱な大学の建てもののなかで、いかに見事な研究の成果が挙げられたかを物語ったが、その話など今度の贈呈式の後の歓談の際にも語られたところであった、と。

「シュムペーター文庫」の蔵書には、直筆のメモ類が挿入されていたもの(文庫目録の注記には“J.S.'s notes inserted.”と記載)が多数あり、シュンペーターの思索過程を示す貴重な一次史料といえる。メモ類自体は、挿入されていた蔵書の著者名、書名、出版者、出版年、請求記号およびメモの枚数の記録を採り、中性紙の保存袋に移し替えて貴重資料室に保管している。その多くはオレンジ色の紙片で、ガベルスベルガー(Gabelsberger)式の速記文字(当時としてはドイツ語の速記の代表的な方式だったが、現代では解読できる人材は稀少)で書かれている。


一橋大学附属図書館 学術・企画主担当