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人物情報の調べ方

【 】内は一橋大学の請求記号  「参考」とある場合は、本館1F参考図書コーナーにあり

1. 人物情報を調べる

1.1 調べ方のガイド

  • 池田祥子(1995)『文科系学生のための文献調査ガイド』青弓社, p.96-120: 第7章「人物情報の探し方」【0100:109】
  • 大串夏身(2006)『チャート式情報アクセスガイド』青弓社, p.132-138: 4-4「人物情報について調べる」
  • 高山正也, 岸田和明(2002)「資料検索法テキスト」, 6.7「人物・団体情報の検索法
  • 長澤雅男(1994)『情報と文献の探索』第3版. 丸善, p.177-214: 第6章「人物・団体情報の探索」【0100:121】
  • 馬場萬夫(1990)『日本人名情報索引』改訂増補版. 国立国会図書館 (研修教材シリーズ, no. 7)
  • 『日本の参考図書』第4版. 日本図書館協会, 2002, p.190-212「伝記」【0000:356 参考】
  • 人物情報をさがす(一般)」(東京都立図書館 テーマ別に調べるには 『知っていると便利』シリーズ)

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1.2 人名辞典、百科事典

  • 有名な人物の場合は、通常の人名辞典や百科事典で調べる
  • 百科事典は必ず索引も引く(見出し項目から得られる情報は氷山の一角に過ぎない)
  • 日本語や英語の百科事典には掲載されていなくとも、他の言語の百科事典から情報が得られる場合も多い

1.2.1 どの事典に掲載されているかを調べる総索引

  • 『人物レファレンス事典』新訂増補. 日外アソシエーツ, 1996-2006 【2800:475 参考】 収録対象は日本人
  • 『外国人物レファレンス事典』日外アソシエーツ, 1999-2002 【2800:639 参考】「古代-19世紀」と「20世紀」とから成る

1.2.2 専門分野、時代、地域等に応じて調べる

  • 一般的な人名辞典や百科事典の情報では不十分な場合や、掲載されていない人物の場合は、専門分野、時代、地域等に応じて各種の事典を調べる
  • 人名辞典以外の各種参考資料も利用する
  • 特定の専門分野の事典(例):
    • 『来日西洋人名事典』武内博(編著). 増補改訂普及版. 日外アソシエーツ, 1995 【2800:405 参考】
      • 戦国時代から大正時代までに来日した西洋人を収録
    • 『図説教育人物事典 : 日本教育史のなかの教育者群像』唐澤富太郎(編著). ぎょうせい, 1984 【3703:5 参考】
    • American men & women of science 1995-96 : a biographical directory of today's leaders in physical, biological and related sciences. 19th ed.: 1995-96. New Providence, N.J. : Bowker, 1994 【4030:1 参考】
    • 『世界科学者事典』デービッド・アボット(Abbott, David)(編), 伊東俊太郎(日本語版監修). 原書房, 1985-1987 【2800:462】
  • 出身地や活動場所が特定できる場合、特定地域についての事典(例):
    • 『愛知百科事典』【2910:104 参考】、『茨城県大百科事典』【2910:115 参考】
  • 『国書人名辞典』岩波書店, 1993-1999 【2800:79 参考】
    • 国初から慶応4(1968)年までの日本人著作者約3万名を収録
  • Smith, William(ed.). A dictionary of Greek and Roman biography and mythology. New York : AMS Press, 1967 【2800:302 参考】
  • 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店, 1960 【1600:207 参考】
  • 『日本架空伝承人名事典』大隅和雄ほか(編). 増補版. 平凡社, 2000 【2800:828 参考】
  • 「Dictionary of National Biography on CD-ROM」 (館内情報検索コーナー)
    • DNBの略称で広く知られる伝記事典。1985年までに没した英語圏の著名な人物約4万人に関するデータを収録。本学では、冊子体も 所蔵【Rev. ed. 2800:445 参考】

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1.3 現代人名

  • 大串夏身(1995)「人物情報」. 情報探索ガイドブック編集委員会(編)『情報探索ガイドブック : 情報と文献の森の道案内』勁草書房, p.303-315 【0070:358】
    • たとえば取引先の社長の経歴や趣味、対談予定の評論家の考え方をあらかじめ知っておきたい、諮問機関の委員に学識経験者を選びたい、等の必要が生じた場合の対策
  • 情報アクセス研究会(1995)『現代人のための情報収集術』青弓社, p.66-74: 「人物情報の調べ方」 【0020:27】
  • 『人事興信録』興信データ 【2800:89 参考】
  • 『日本紳士録』交詢社 【2800:86 参考】
  • 各国/地域/分野別のwho's who(生きている人)、who was who(死んだ人)
  • 『明治過去帳 : 物故人名辞典』大植四郎(編). 東京美術, 1971 【2800:387 参考】
  • 『大正過去帳 : 物故人名辞典』稲村徹元ほか(編). 東京美術, 1973 【2800:386 参考】
  • 『昭和物故人名録 : 昭和元年?54年』日外アソシエーツ, 1983 【2800:370 参考】
  • 大宅壮一文庫の雑誌記事索引
  • 「CD-現代日本人名録2004」(館内情報検索コーナー)
    • 収録対象: 2003年12月1日現在の生存者約13万名
  • 読売新聞 ヨミダス歴史館 搭載の「人物検索」
    • 現代のキーパーソン約2万2000人を収録
  • 研究者
  • 作家、芸術家、芸能人等は、インターネットのサーチエンジンで検索

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1.4 伝記、人物研究

  • 『世界伝記大事典』ほるぷ出版, 1978-1981 【2800:92 参考】
    • 「日本・朝鮮・中国編」(1978)、「世界編」(1980-1981)
  • 『伝記・評伝全情報』日外アソシエーツ 【2800:103 参考】
    • 「日本・東洋編」;「西洋編」
  • 『人物研究・伝記評伝図書目録』新装版. 図書館流通センター, 2001 【2800:857 参考】
    • 「日本人・東洋人篇」;「西洋人篇」
  • 『人物文献目録』1987-2001. 日外アソシエーツ 【2800:470 参考】
    • I「日本人編」、II「外国人編」
  • 『年刊人物文献目録』日外アソシエーツ 【2800:470 参考】 1980-1986
  • 『人物書誌索引』深井人詩(編). 日外アソシエーツ, 1979 【2800:503 参考】
  • 『日本人物文献目録』法政大学文学部史学研究室(編). 平凡社, 1974 【2800:422 参考】
    • 明治初年から昭和41年末までに刊行された日本人の伝記に関する文献を収録
    • 3万人余の被伝者を50音順に排列し、書誌・図書・雑誌の順に文献を類別
  • 『人物文献索引』国立国会図書館参考書誌部, 1967-1972 【2800:331 参考】
    • 昭和20-39年刊行分(人文編)、明治以降-昭和43年刊行分(経済・社会編)、明治以降-昭和46年刊行分(法律・政治編)
    • 日本語で書かれた伝記資料(図書、雑誌、新聞、パンフレット等)を被伝者のABC順に排列
    • 日本人約9,370人、外国人約2,580人、列伝1,870点を収録
  • 『日本人物情報大系』皓星社, 1999- 【2800:691】
  • K.G. Saur社の人名録集成シリーズ
    • 古今の人名辞典をはじめとする世界中の各種の膨大な文献から人名情報を集め、特定の言語圏や文化圏毎に編集したマイクロフィッシュ(継続刊行中)
    • 一橋大学では選択的に購入し、社会科学古典資料センターに配置している

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1.5 著作リストを作成する

  • その個人の全集や著作集、学者ならば還暦/退官/古稀などの記念論集を探せば、著作一覧や年譜が掲載されていることが多い
    (ただし、高名な学者の全集や著作集で、一流の出版社から刊行されているものに掲載されている著作目録でも、実際に確認してみると、 間違いが山ほどみつかる場合がある)
  • 既存の著作リストが入手できたとき、その収録対象年代以降の文献については、Webcat PlusNDL-OPAC、オンライン書店等で図書を、CiNii、「雑誌記事索引」等で雑誌記事を検索して補う

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1.6 引用句の出典を調べる

  • The Oxford dictionary of quotations. 5th ed. Oxford : Oxford University Press, 1999 【9030:35 参考】
  • 『ギリシヤ・ラテン引用語辞典』田中秀央,落合太郎(編著). 新増補版. 岩波書店, 1963 【8900:20 参考】
  • Familiar Quotations(Bartleby.com)
  • 例)「クレオパトラの鼻: もしそれがもっと低かったなら、大地の全表面は変わっていただろう」は誰の言葉か? またその原文は?
    『故事・俗信ことわざ大辞典』小学館, 1982 【8130:19 参考】
    「... パスカルの「パンセ」に、「Le nez de Cleopatre: S'il eut ete plus court, toute la face de la terre aurait change. 」」
    *Pascal, Blaise“Pensees”断章番号162

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1.7 人名の読み方を調べる

  • 『人名よみかた辞典』増補改訂. 日外アソシエーツ, 1994 【2800:338 参考】
  • 『名前から引く人名辞典』新訂増補. 日外アソシエーツ, 2002 【2800:973 参考】
  • 『難読稀姓辞典』高信幸男(編). 日本加除出版, 1993 【2800:400 参考】
  • 『歴史人名よみかた辞典』日外アソシエーツ, 1989 【2800:381 参考】

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2. 世界の人名とその周辺

2.1 人名の基礎知識

  • 『岩波西洋人名辞典』増補版. 岩波書店, 1981 【2800:377 参考】
    • 図書館業界では、著者名の典拠として定評がある
    • 「凡例」には、英語からサンスクリットまで23余の言語について、文字と発音の対応の概説がある
    • 「付録」の「人名対照表」は、語源を共有するファーストネームの西洋主要言語での形の一覧
      (例:〔英〕John(ジョン)、〔仏〕Jean(ジャン)、〔伊〕Giovanni(ジョヴァンニ)、〔西〕Juan(フアン))
  • 黒木三郎ほか(編)『家の名・族の名・人の名 : 氏』三省堂, 1988 【2800:144】
  • 島村修治『外国人の姓名』帝国地方行政学会, 1971 【Qb:486】 → [改訂]: 島村修治『世界の姓名』講談社, 1977
  • E.C.スミスほか(共編)『西欧人名知識事典』荒竹出版, 1984 【2800:412 参考】
  • 松本脩作,大岩川嫩(編)『第三世界の姓名 : 人の名前と文化』明石書店, 1994 【2800:77】
    • 人名に関する慣習は、民族や地域によって多種多様
    • 西洋式の姓は近代以降に普及したもの
    • 姓というものをそもそも使用していない民族も多い
  • 人名の取扱は、目録・索引の作成に必要な知識なので、図書館実務の手引書にも解説がある
    • 丸山昭二郎(編)『洋書目録法入門. つくり方編』日本図書館協会, 1986 (図書館員選書, 6) 【Ag:733】 → 改訂版, 1990
    • 丸山昭二郎(編)『洋書目録法入門. マニュアル編』日本図書館協会, 1988 (図書館員選書, 7) 【Ag:733】

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2.2 姓が複数の語で構成されている場合

  • 一般に、カードや冊子体の目録を検索する際は、どの部分を姓の先頭とみなすか、目録作成機関によって判断が分かれている場合があるので、姓の先頭をさまざまに想定して検索してみる必要がある(事典類を検索する場合も同様)
  • 名(given name)と姓(surname)との間につなぎとして介在する前置詞(主として「の」を意味する語: de, von, vanなど)や冠詞を、姓の構成要素として扱うかどうかは、個々の言語毎に慣習が異なる
例)ヴァン・デル・ポストVan der Post, Laurens
ゲーテGoethe, Johann Wolfgang von
ラス・カサスCasas, Bartolome de las
ラ・フォンテーヌLa Fontaine, Jean de

  • 『英米目録規則. 第2版日本語版』日本図書館協会, 1982, 第22章「個人標目」【Ag:345】
    • どの部分を姓の先頭として扱うか、個別言語毎に詳しく規定している
    • 『英米目録規則』22.5C. 複合姓
    • 『英米目録規則』22.5D. わかち書きされた前置語のついた姓:
    • 「 ...姓に冠詞か前置詞,またはこのふたつの組み合わせが含まれる場合は,その個人の用いる言語か居住国の名簿において最もよく記入の要素として用いられる要素のもとに記入する ... 」
    • 『英米目録規則』付録D 用語解説:
    「Compound surname(複合姓)
    2以上の固有名からなる姓で,しばしばハイフン, 接続詞もしくは前置詞で結ばれている。」
  • 複合姓は、特にスペイン語やポルトガル語で複雑で、注意を要する
    • 例) 詩人Federico Garcia Lorcaの姓は、「ロルカ」ではなくて、「ガルシア・ロルカ」
    • cf. 吉田ルミ子「ラテンアメリカ : 特に複合姓について」. 松本脩作,大岩川嫩(編)『第三世界の姓名 : 人の名前と文化』明石書店, 1994, p.333-337 【2800:77】
  • 原誠ほか(編)『スペインハンドブック』三省堂 , 1982 【3000:652 参考】:
  • 「スペイン人の姓名は,個人名(洗礼名,ファースト・ネーム),父方の姓,母方の姓によって構成される. ...
    民事登録上は司法省令(1958年公布)の定めがあるものの,実生活ではさまざまな形が現われるため,誤解しないよう注意する必要がある.
    登録上は,父方の姓,母方の姓,という順に書き,その間にyを置く.しかし実際は,このyを置かないのがむしろ普通 である.また,個人名と姓の間にdeを置いたり,2つの姓をハイフンでつなぐ場合もある.


    Jose Ortega y Gasset
    Miguel de Unamuno y Jugo
    Jose Pedro Perez-Llorca

    deは本来は貴族が用いたが,一般人がみずからの出自を誇る気持を込めて用いる場合もあったという.deも,yも,ハイフンも,用いるか否かはその人の習慣によるところが大きい....
    スペイン人はこのように2つの姓を持つが,日常的には父方の姓しか表記しない場合が多い.例えば電話帳は父方の姓のみによっている. ...
    しかしながら,父方の姓が非常にありふれたものであったりすると,日常的にも母方の姓と共に用いたり,父方の姓のか わりに母方の姓を用いる場合がある.画家のピカソ(Pablo Ruiz Picasso)が母方の姓を通称にしていたことはよく知られている....
    女性が結婚した場合,公式には自分のフルネームを保持して,その後に夫の姓をdeでつなぐが,日常的には父方の姓のみに夫の姓をつなぐのが普通である.

    〔個人名〕〔父方の姓〕  〔夫の姓〕
    Maria    Lopez  de  Fernandez ... 」(p.600)

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2.3 姓を持たない民族も多い

2.3.1 ビルマ語

東京外国語大学語学研究所(編)『世界の言語ガイドブック』(2)「アジア・アフリカ地域」三省堂, 1998 【8000:277】 :

「 ... ビルマ語 ... 命名は, 生まれた子供の曜日に配置されている頭子音字の中からいずれかを選び, その頭子音字で始まる語を含め名づけられる. ... 逆に, 名前を見れば, その人の生まれた曜日が分かる. ただし, 今日, 命名の仕方は, このような伝統的な方法だけではなく, 民主化闘争の指導者スゥ・チー女史のように, 父親のアウン・サン将軍の名を取り入れて, アウン・サン・スゥ・チーとしたり, ... 」(p.269)


高橋照雄「ミャンマー : ビルマ人の名前と対人関係」. 松本脩作,大岩川嫩(編)『第三世界の姓名 : 人の名前と文化』明石書店, 1994, p.118-122 【2800:77】:

名前による男女の区別は、男性用あるいは女性用の名前からある程度見分けることができるが、男女兼用の名前も多いので完全に区別することは不可能である。
そこで敬称が男女を区別するのに役立つ。男の場合、社会的地位あるいは年齢が上の者にはウー、同程度ならコー、下ならばマウンをそれぞれ名前の前に付ける。女なら、年齢や地位の高い者にはドー、同程度か低い者にはマを付けて呼ぶ。すなわち、元首相ウー・ヌ(UNu)の名前はヌであり、ウーは名前ではなく敬称である。元国連事務総長のウー・タン(U Thant)も同様である。
 敬称を含めても名前から判断できることは性別までであり、名前から夫婦関係や親族関係の有無を調べることは全く不可能である。 ... ビルマ人は姓あるいはそれに類するものを一切持たないからである。」(p.120)

2.3.2 アラブ

酒井啓子「イラク・湾岸 : 名前-自慢する者、隠す者」. 松本脩作,大岩川嫩(編)『第三世界の姓名 : 人の名前と文化』明石書店, 1994, p.271-278 【2800:77】:

「 一九九一年の湾岸戦争の際、イラクのフセイン大統領とその唯一の味方であったヨルダンのフセイン国王両名が「ダブル・フセイン」とあだ名されることが多かった。もちろん、この「二人のフセイン」の呼び方は間違った連名の仕方である。フセイン国王の「フセイン」がまぎれもなく本人の名前であるのに対して、フセイン大統領の本人の名前は「サッダーム」であり、アラブ社会で一般的に見られるとおり、フセインは父の名である。本人・父・祖父の三名連記の名前の記述が、欧米社会で姓名のように理解されてしまったことからくる「よくある誤解」だ。
 そのサッダーム・フセイン大統領の本名は、彼自身の市民登録簿には「本人の名・・サッダーム、父の名・・フセイン、祖父の名・・マジード、ラカブ(尊称)・・アル=ナースィリ」と記載されている。つまり正式には「サッダーム・フセイン・マジード」となるが、ラカブを用いた場合は最後にアル・ナースィリをつけることになる。」(p.271)

2.3.3 アイスランド

池上佳助「アイスランド語 : 姓のない社会」. 「朝日ジャーナル」(編)『世界のことば』朝日新聞社, 1991 (朝日選書 ; 436), p.124-125:

「アイスランドの人々は、私たちがいうところの姓すなわちファミリネームを持っていない(近代以降デンマークなどから移住してきたわずかの家族は姓をもっている)。アイスランドの大統領(女性)が訪日した際、日本のマスコミはフィンボガドッティル大統領と紹介したが、それを彼女のファミリーネームだと思うと大きな誤りである。彼女の名前は正確に言うとビグディス・フィンボガドッティル(VigdisFinnbogadottir)であるが、フィンボガドッティルというのは「フィンボギ(父親のファーストネーム)の娘」ということを表しているにすぎず、家族の姓ではない。アイスランドでは子供が生まれると、まずその子のファーストネームを決め、次にセカンドネームとして男の子であれば父親のファーストネームに息子を意味するソン(son)、女の子であれば娘を意味するドッティル(dottir)を付け命名する。このようにして父親の名前を引き継ぐことで、共通のファミリーネームを持たずともセカンドネームが一族の証となっているのである。もっとも、アイスランドの人々はお互いを呼び合う場合、ファーストネームだけというのが普通のようで、大統領もビグディス大統領と呼称されることが多い。
 最後に、アイスランドのある四人家族をご紹介しましょう。
 父―パウル・ヘルマンソン/母―オーサ・ハンスドッティル/長男―ヨン・パウルソン/長女―アンナ・パウルスドッティル
 一家四人の名前がすべて違っていますが、その理由はもうおわかりのことと思います。」(p.125)

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2.4 ヨミガナ

2.4.1 日本

  • たとえば、「深沢七郎」は
    • 『国立国会図書館著者名典拠録』【2800:352 参考】 では「ふかわ・しちろう」
    • 『日本書籍総目録』【0000:13 参考】 の著者索引でも、中公文庫、文春文庫のジャケットの著者紹介でも、「ざ」は濁音
    • ところが、新潮文庫、ちくま文庫の奥付では、清音の「さ」、
    • 1987年8月18日に亡くなった際の新聞記事は、濁音「ざ」を採っている
  • ヨミガナでコンピュータ検索するときは、単に清濁が違うだけでも、検索結果がまるで違ってしまう
  • 著者名典拠(authority control)は、多様な表記や読みを統一し、また、同名異人を区別して、特定著者の著作が一元的に検索できるようにする機能が意図されている。けれども反面、その図書館または目録作成機関がいったん決めてしまうと、後から変更しないことになっているので、一般利用者が想定する表記やヨミガナと食い違って、かえって検索の障害となる場合もある。また、同一人物について、別の図書館では異なるヨミガナを採用している場合もある。
  • 「柄谷行人」の場合、『日本書籍総目録』【0000:13 参考】 の著者索引をはじめ、一般には「からたに・こうじん」として流通しているが、国立国会図書館やNACSISの著者名典拠は、「からたに・ゆきと」なので、「こうじん」で検索してもうまくいかない。公共図書館では、取次業者系の目録を利用しているためか、「こうじん」で検索できる場合が多いようである。

大岩川嫩「日本 : いま歴史の節目にたつ、わたしたちの名前」. 松本脩作,大岩川嫩(編)『第三世界の姓名 : 人の名前と文化』明石書店, 1994, p.385-410 【2800:77】:

「 歴史上の人物では、「玉の緒よ絶えなば絶えね……」の歌で知られる平安末期・鎌倉時代初頭の歌人・式子内親王の名は、私たちは国文学の勉強でもシキシないしショクシ内親王と読んでいた。もちろん、正しい訓がわからないので、慣例的に音読みしていたまでである。ところが、角田文衛博士によると、そうした怠惰は許されず、できるだけ正しい読み方に努めねばならず、この場合は「ノリコ」と読まねばならないという。ノリコ内親王 ... 。 ...安徳天皇を生んだ高倉天皇の中宮・平徳子も「ノリコ」であり、「トクコ」などという重箱読みはもってのほかで、はるか後世に出てきたものだという。」(p.403-404)
「有名な民俗学者・折口信夫(一八八七?一九五三)の場合、姓も名も一筋縄では行かない。姓のほうについては自身の著作の中に「折口といふ名字」という一文があって、オリクチかオリグチかについての考証が試みられている。
... 。名の方についてはご本人は書き残していない。そこで、折口門下の高弟 の一人・池田彌三郎教授は、...生前の本人の話の聞き書きやら、親戚・友人・知人の説やらだが、要するに信夫の父は命名にあたって「シノブ」とつけた(折口自身の談)が、幼時から中学時代まで家庭や学校では「ノブオ」と呼ばれていた。それは幼名・通称のたぐいだったようだ、という多くの証言があるが、池田自身は本人が生前あまりこのことにふれたがらなかったのにはもっと深層心理での屈折した理由があり、本来はノブオであったものを「青年期以後、ことさらに『しのぶ』と自身で呼称したのではなかったか。」という推理をくだしている。この池田教授の問題提起の当否は未だに決定されていない。」 (p.404-405)
「日常生活では、公私の記録や書類にふりがな欄が設けられ、その記入を要求されている。ところが、ただひとつの例外が戸籍であり、戸籍を見たのでは漢字の名の読み方はわからない。」(p.406)

2.4.2 外国人名のカナ表記

  • 表記法を考えるには、個々の言語についての知識も必要
    • たとえば、スペイン語では文字 v も発音は b と同一であり、カタカナ表記に「ヴ」を用いてはいけない
  • 国籍よりも民族的出自の方が重要
    • たとえば、画家のミロ(Joan Miro)はカタルーニャ人なので、名はスペイン語式の「ホアン」ではなく、「ジョアン」と読む
  • 個人レベルの自称が優先される場合もある
    • たとえば、スウェーデン系フィンランド人の作曲家シベリウスの本名は Johan Julius Christian Sibelius だが、本人の名乗りによるフランス語式の名「ジャン」Jeanが事典類にも採用されている
  • 慣用が確立している場合は、原音に忠実でなくとも妥協する場合がある
    • たとえば、オランダ出身、フランスに移住した画家Vincent van Goghは、オランダ語の発音では「フィンセント・ファン・ッホ」だが、事典類の見出し等でも、慣用形の「ッホ」が採られている
  • 各種事典類での表記を一覧し、標準的なかたちを知るには、『外国人物レファレンス事典』等を参照

早野勝巳『アンデルセンの時代』東海大学出版会, 1991:

「 日本のアンデルセン研究家がまず頭を悩ますのが、この作家名をどのように表記すべきかである。というのは、デンマーク語ではしばしばdが発音されないことがあり、運悪くちょうどこれがAndersenという彼の姓のところで生じるからである。 現代デンマーク語の発音にできるだけ忠実に彼の姓を表記すれば、アナセンということになる。」(p.3)
「 ...日本アンデルセン協会でもしばしばこのことが問題になるが、結局はアナセンを採用するにはまだ時期尚早であろうという結論に達し、もう十年以上も経過しているのである。」(p.4)

文化庁(編)『外来語』大蔵省印刷局, 1976 (「ことば」シリーズ ; 4) 【8100:52:4】:

「「ギョエテとは俺のことかとゲーテ言い」 という斎藤緑雨(一八六八?一九〇四、本名、賢(まさる)。小説家、評論家、随筆家。作品に小説「かくれんぼ」などがある。)の有名な川柳がある。ドイツの作家Goetheの表記は、今でこそゲーテに落ち着いたが、かつては、ゴエテ、ギューテ、ギェーテ、ギョートなど、二十九通りに書かれていた。」(p.44)

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2.5 エピソード、伝記、史実

2.5.1 コロンブス

増田義郎『コロンブス』岩波書店, 1979 (岩波新書 ; 黄版93) 【0800:33:黄93】:

「... 「コロンブスの卵」の話しは、後世の人のつくりばなしであって、彼の伝記に関する史料をいくらさがしてみても、そんなことはどこにも書いてないのです。」(p.2)


青木康征『コロンブス : 大航海時代の起業家』中央公論社, 1989 (中公新書 ; 936) 【0800:25:936】:

「さて、コロンブスはバルセロナに四月二十日ごろ到着した。 ...。両王への公式報告が済むと、王侯貴族との祝賀の宴が待ち受けていた。有名な「コロンブスの卵」の逸話はこうした宴のなかで、具体的にはトレド大司教ペドロ・ゴンサレス・デ・メンドーサが催した宴のなかで生まれたと解されているが、根拠はない。これはミラノに生まれ新大陸を旅行したジロラモ・ベンゾーニが その著『新世界史』(一五六五年刊)のなかでコロンブスの逸話として脚色したもので、モデルはイタリア初期ルネサンスを代表する建築家フィリッポ・ブルネレスキ(一三七七?一四四六)の逸話であったとされる。」(p.114)

cf. Brunelleschi, Filippo
cf. Benzoni, Girolamo(1565)“Historia del mondo nuovo”

2.5.2 ワシントン

『岩波=ケンブリッジ世界人名辞典』岩波書店, 1997 【2800:560 参考】:

「 ウィームズ,メイソン・ロック Weems, Mason Locke 通称ウィームズ牧師 Parson Weems(米1759-1825)... ジョージ・ワシントン伝の第5版(1806)の中で,小さかったワシントンと桜の木の挿話を初めて活字にしたことは有名である. ...」(p.97)

cf. Weems, Mason L.(1800). The life of George Washington

2.5.3 子ども向けの伝記や教科書

中村紀久二『教科書の社会史 : 明治維新から敗戦まで』岩波書店, 1992 (岩波新書 ; 新赤版233):

「 国立教育研究所の板倉聖宣氏は、ジェンナーにかぎらず、科学者の伝記が誇張・歪曲されることの問題を指摘している。板倉氏によれば、「湯沸かしのふたを蒸気が振動させたことからワットが蒸気機関を発明した」というのはまったくのつくり話であり、「リンゴが落ちるのを見てニュートンが万有引力を考えた」というのはニュートンの姪の話をヴォルテールなどが伝えたもので、ニュートン自身は何も記録していない。また「ガリレオが寺院のランプの揺れから振り子の等時性を発見し、ピサの斜塔から落下の法則を発見した」という話は信憑性に問題があるという。そして、子どもや素人向けの教訓話として、曲解してつくったり、まったく創作したりするのは、わかりやすいのでよく人に伝わるが、科学的研究を誤解させる有害なものであると結論づけている。
 教科書自身はかってに美談を創作しない。しかし数多い既刊の文献の中の一冊に、教育的効果が抜群に高まると思われる美談があれば、それが「創作」の可能性すらある疑わしい事柄であっても、ためらうことなく採用される。ジェンナーについていえば、国定教科書の関係者は嘘を承知で『頌徳之記』を原拠に、「我が子に牛痘接種」を導入したのであった。」(p.217-218)


斎藤美奈子『紅一点論 : アニメ・特撮・伝記のヒロイン像』筑摩書房, 2001 (ちくま文庫):

「 (A) 世間に流布している単なるイメージ  
 (B) 子ども向けの伝記を支配しているイメージ
 (C) 当人の実像に近いであろうイメージ
 Aは伝記を読んだことがない(読んでも忘れちゃった)人が漠然と抱いている像、Bは子ども向けの伝記を構成している像、Cは大人向けのしっかりした伝記から思い描ける像である。むろん、いずれも本人に実際に会って得た感触ではないのだから、すべて虚像だ、ともいえる。いえるがしかし、ここで問題にしたいのは、ABC間に横たわるギャップである。
 A像はつまんない聖人君子だが、B像は、じつはアニメの国のヒロインにも似たスター性に彩られている。しかし、たいていの人は、ここまでで終わりで、C像にいたることはない。そして年月がたつうちに、またA像しか思い描けなくなってしまう。
 その最たるものがナイチンゲールであろう。」(p.228-229)
「 ナイチンゲール伝と名のつく本は山ほどあるが、世評の定まっている本格的な伝記はエドワード・クック『ナイティンゲール―その生涯と思想―』(一九一三)とセシル・ウーダム=スミス『フロレンス・ナイチンゲールの生涯』(一九五〇)である。... 。
 これらに目を通すだけでも、彼女のイメージは一八〇度、転換する。彼女の人生は、戦争から帰ってからのほうが、はる かに迫力に満ちているのだ。さらには前半生も、子ども向けの伝記とはだいぶ印象が異なる。総じていえるのは、子どもの伝記が慈愛に満ちた(女性的な?)人物として彼女を描いているのに対し、現実の彼女は、ときには非情ともいえる(男性的な?)リアリストだったらしいことである。」(p.239-240)
  • Cook, Edward. The life of Florence Nightingale. London : Macmillan, 1913. 2 v.
  • エドワード・クック(中村妙子,友枝久美子訳)『ナイティンゲール : その生涯と思想』時空出版, 1993-1994. 3冊
  • Woodham-Smith, Cecil. Florence Nightingale, 1820-1910. London : Constable, 1950
  • セシル・ウーダム・スミス(武山満智子,小南吉彦訳)『フロレンス・ナイチンゲールの生涯』現代社, 1981. 2冊

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2.6 暦の換算

  • 人名辞典では通例、現行のグレゴリオ暦に換算した生没年月日が記載されている

2.6.1 ワシントン

岡田芳朗『暦のからくり : 過去から学ぶ人生の道しるべ』はまの出版, 1999:

「 ...ジョージ・ワシントンの誕生日は二月二二日で、アメリカではこの日、「ワシントン・バースデー」と称してさまざまな記念行事が催される。
... イギリス本国とその植民地では、依然としてユリウス暦(旧暦)を使用していた。 ... 。
そのうえイギリスでは新年のはじまりを三月二五日としていたため、一月から三月二四日までは前年に属していた。すなわち、ワシントンの誕生日は正しくは一七三一年二月一一日なのだけれども、これは旧暦の日付であり、新暦になおすと、一七三二年二月二二日だったわけである。」(p.180-181)


Boorstin, Daniel J.(1983). The discoverers. ダニエル・ブアスティン(鈴木主税, 野中邦子 訳)『大発見 : 未知に挑んだ人間の歴史』集英社, 1988 【2000:81】 → 1991 (集英社文庫):『どうして一週間は七日なのか : 大発見 1』:

「旧式の暦では1731年2月11日となっていたジョージ・ワシントンの誕生日が、新しい暦では1732年2月22日と なった ...。」(p.33)

2.6.2 レーニン

  • Ленинの誕生日はユリウス暦では1870年4月10日、ソ連の「レーニン生誕記念日」は4月22日

東郷正延ほか(編)『ロシア・ソビエトハンドブック』三省堂, 1978 【3000:651 参考】:

「 ... 1918年1月24日付 ... の布告によりロシアで初めてグレゴリオ暦 ... が採用された.... 1918年1月31日の翌日を2月1日ではなく, 2月14日とすることとし, また,1918年7月1日までは新暦の日付の後にカッコで旧暦の日付を示すこととした. ... たとえば旧暦1870年4月10日(金曜)は新暦の1870年4月22日になり、曜日はやはり金曜日である。」(p.280-281)

『世界伝記大事典』「世界編」12 【2800:92 参考】:

「 ‘レーニン’はもちろんペンネームであって,本名はヴラジーミル・イリイチ・ウリヤーノフという.彼は数えきれないほど多くの偽名,筆名を用いていたが,1901年ごろからレーニンと署名し始めた.‘レーニン’の由来は定かでない.一説によると,流刑地シベリアを貫流しているレナ河にちなんだとも言われるし,またごく単純に,父方の姓ウリヤーニンに基づくと説く者もある.」(p.322)

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2.7 肖像

  • 池田祥子(1995)『文科系学生のための文献調査ガイド』青弓社, p.164-170: 第11章「写真・絵の探し方」【0100:109】

2.7.1 西郷隆盛

  • 西郷隆盛の肖像画は多数残っているが、本人と見られる写真は一枚も確認されていない
  • エドアルド・キヨッソーネ(Chiossone, Edoardo, 1832-1898)による「西郷隆盛像」は、上半分は弟の西郷従道(つぐみち)、下半分は従弟の大山巌の顔を合成して描かれたコンテ画
  • また、上野公園の西郷隆盛銅像については、
    「除幕式に立ち会った西郷未亡人のイトが
    「宿んしはこげなおひとではなかっ。」
    と叫んだと伝えられる。風貌が全く似ていなかったのか、礼儀正しい西郷が公衆の面前で兵児帯姿で立っているのが似つかわしくなかったというのか、いずれにせよ、イト未亡人のイメージと異なっていたらしいが、その後西郷さんの風貌のイメージはこの銅像をもとに大衆の中に印象づけられてしまった。」

2.7.2 源頼朝

  • 従来、源頼朝像として教科書や事典にも掲載されてきた、神護寺蔵の肖像画は、実は、足利尊氏の弟、足利直義(ただよし)の肖像だったという説がある

米倉迪夫『源頼朝像 : 沈黙の肖像画』平凡社, 2006 【0800:36:577】:

「 ところで近年、中世の肖像画についてたて続けに像主名の変更についての提案がなされたことは記憶に新しい。かつて足利尊氏像(守屋家旧蔵)とされた画像が像主不明の騎馬武者像となり、高師直(こうのもろなお)像とされて落ち着いたかに見えたが、これもまた変更される気配である[*31]...」(p.51)
「*31――これら肖像画の像主否定、確定の論考はひとつひとつここにあげないが、黒田日出男『王の身体 王の肖像』(イメージ・リーディング叢書、平凡社[, 1993])第三部、肖像画と王権――肖像画から歴史を読むために――にその概要が示されている。参照されたい。」(p.50)

cf. 黒田日出男(編)『肖像画を読む』角川書店, 1998
cf. 肖像情報データベース(東京大学史料編纂所)

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2.8 フランス法の氏名

木村健助『フランス法の氏名』関西大学出版・広報部, 1977 【Mh:345】:

「共和暦一一年芽月一一日法と呼ばれるところの、名と氏名変更とに関する法律 ...は、すなわち普通の西暦で一八〇三年四月一日に当る日の公布であるから、今から一七〇年も前のものであるが、今日も依然として施行されている。その第一条には、「本法公布の後は、各種の暦の中に用いられている名、及び昔の歴史で有名な人物の名のみが、子の出生を証するための身分登記簿に、子の名として、受理されることができる。公務員の〔作成する〕証書類の中に、その子の他の名を用いることは禁ぜられる」と規定した。」(p.130)
「各種の暦の中に用いられている名」(les noms en usage dans les differents calendries)...。各種の暦というのは、従前から一般に使用されていたカトリックの暦(calendriercatholique)のみならず、新らしく作られた革命暦(calendrier revolutionnaire)などをも含むのである。暦日に用いられている名というのは、カトリックの暦では一日一日がそれぞれ聖徒の祝日になっているので、その聖徒の名を指すのである。JeanとかPaulとかMarieとかいう名がそれである。革命暦とは、正確には共和暦(calendrier republicain)と呼ばれる一七九二年制定の暦である。...共和暦のみに限らずカトリックの暦でも一般によく知られている名は数が少ないし、滑稽なと思われる名も含まれているから、暦は豊富な名称源ではないともいわれる。」(p.131)
「選名の範囲について、もうひとつの枠は「昔の歴史で有名な人物の名」(ceux [noms] des personnages dans l'histoire ancienne)である。」(p.131)

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