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平成23年度 一橋大学附属図書館企画展示
「読書のかたち : 読む行為と空間」

出品資料  (PDF:77KB)

  1. 書物の形態
  2. 音読の世界・黙読の世界
  3. 中世のテクスト
  4. 活版印刷の登場
  5. 再生されるテクスト
  6. 変わりゆく大学図書館
  7. 書見台を使った読書
  8. 映像資料

VI. 変わりゆく大学図書館

※画像はクリックで最大化されます。

E-Book / E-Journal

 E-Journal(電子ジャーナル)とは、電子化され、ウェブで提供される学術雑誌のことである。紙媒体で出版されていた雑誌を電子化したものが多いが、中には電子媒体でのみ出版されているものもある。インターネットの普及に伴いE-Journalの数は1990年代半ばから急速に増加した。E-Journalの中には無料で閲覧できる雑誌もあるが、多くは有料であり、図書館が出版社に購読料を支払って利用者に提供している。現在は雑誌のみでなく紙の書籍を電子化したE-Book(電子書籍)も図書館のコレクションの一部として利用者に提供されている。E-Journal、E-Bookのメリットとしては、全文検索が可能であること、図書館に行かなくても利用が可能であることなどが挙げられる。また図書館にとっても保存スペースがいらない、紙媒体の資料よりも価格や管理維持費用が安いといった利点がある。

 大学図書館では電子出版の成熟や利用者のニーズの変化を理由に、電子媒体資料のコレクションを充実させ、紙から電子への移行を進めている。たとえばスタンフォード大学は2010年に新しい工学図書館をオープンさせる際、80,000冊あった配架図書を10,000冊に減らしている。多くの大学図書館はまだ紙媒体の資料を館内に保管しているが、それでも利用の少ない資料を館外の施設に移すことはよく行われており、予算に占める電子媒体の割合も大きくなっている。またこれまで書架があった場所には学習用スペースが拡大され、図書館の学習支援機能が強化されるなど、電子化は図書館の果たすべき役割をも変化させている。
社会科学古典資料センター 貴重書のデジタル化作業
社会科学古典資料センター
貴重書のデジタル化作業

修復

 電子化が進む一方、現在存在する資料を後世に残すことも図書館の大切な役割である。現在多くの書籍がマイクロフィルム化・電子化されることにより、紙の本に触れなくても機械を使用してテクストを読むことが可能になった。しかし、これまでの紙の資料がそのまま放置されているわけではない。紙の資料は時間と共に劣化し、また保存状態によってはカビやホコリの影響を大きく受ける。紙の性質によっては出版当時の原型を留めることが難しい資料もあり、歴史ある貴重な文献を失う危険性も無いわけではない。図書館ではこういった資料が100年、もしくはそれ以上の長期的な保存に耐えうるよう、資料の電子化と平行して保存修復活動も行なっている。

 一橋大学附属図書館社会科学古典資料センターは1997年に修復工房を設置し、貴重資料の保存修復活動を行っている。修復は資料の状態を記録することから始まり、個々の資料の傷み具合にあわせて修復・保存方法を選択する。例えば、革製の表紙の劣化が進んだものには、革を保護する保革油を塗り中性紙でジャケットを作成する。製本し直す必要があれば、簡易再製本を行う。ページの破れは、和紙やアイロンを使用して補修を行う。このようにしてこれまでに約54,000冊が修復されている。

 また保存修復活動に必要な知識と技術を他の図書館にも広めるため、年に1回西洋古典資料保存講習会を開催している。
社会科学古典資料センター 貴重書のページ補修作業
社会科学古典資料センター
貴重書のページ補修作業

ラーニング・コモンズ

 大学図書館はこれまで「本を借りるところ」や「静かに研究や学習をするところ」であったが、時代の変化に伴い従来のイメージとは大きく異なる空間も誕生している。代表的なものが1990年代にアメリカの大学図書館で誕生し、日本へも導入されつつある「ラーニング・コモンズ」である。会話やグループワークが可能な共有空間で、電子情報資源へのアクセス環境が整い、学生の自立的な学習や活動をスタッフがサポートする機能を持つ。

 2000年開館の国際基督教大学ミルドレット・トップ・オスマー図書館のスタディエリアは国内最初期のラーニング・コモンズである。アメリカの大学図書館を参考に138席がゆとりを持って配置され、居心地の良い滞在型の空間となっている。レポート作成用のパソコンがあり、隣接するレファレンスルームでは様々な質問を受け付けている。

 お茶の水女子大学附属図書館は2007年の改修でラーニング・コモンズとキャリアカフェを新設した。明るく開放的な空間に70台の学生用パソコンがあり、大学院生のラーニング・アドバイザーがパソコンの利用指導や学習面のサポートに当たっている。飲み物可のキャリアカフェは学習や会話の場であると同時に、学生主催のイベントスペースとして活用されている。

 これらの館では、大学図書館は単なる知識の伝達の場から、活発な知的交流空間へと可能性を広げている。
国際基督教大学オスマー図書館 スタディエリア
国際基督教大学オスマー図書館
スタディエリア
お茶の水女子大学附属図書館 ラーニング・コモンズ
お茶の水女子大学附属図書館
ラーニング・コモンズ
お茶の水女子大学附属図書館 キャリアカフェ
お茶の水女子大学附属図書館
キャリアカフェ

自動化書庫

 自動化書庫は図書館の膨大な資料の保存、出納などを機械によって行う書庫である。年々増え続ける資料をいかに効率良く管理するかという課題に対して、人間を排し、管理方法を機械化することで改善しようという考えから、その運用が広がり始めた。

 現在、世界中にある70程の自動化書庫の約半数が日本で運用されている。国内大学図書館で最初に自動化書庫を導入したのは国際基督教大学である。2000年に導入し、約460,000冊の資料が納められている。それまでは外部倉庫を使って保管していたが、自動化書庫の導入後は人間が立ち入るスペースが不要となり、合わせて資料の保管に適切な条件の基で管理することも可能となった。

 自動化書庫はコンピュータで管理され、利用者は蔵書検索端末で図書を取り出す指示をする。指示を受け取るとステーションと呼ばれる場所まで機械が自動的にその図書を搭載したコンテナを運ぶ仕組みとなっている。国際基督教大学では年間の出庫指示回数が37,000回に及ぶこともあり、利用頻度は年々上昇している。試験期間中には1日に400~500冊の図書が自動化書庫から呼び出され、利用者の手に渡っている。

 指示を出せば数分で手元に運ばれてくるため、利用者は自動化書庫に置かれていることを特段気にすることなく資料を利用することができる。また、自動化書庫には効率的な資料の保管ができるという利点もある。しかし、紙媒体の資料は今後も存在し続けるため、自動化書庫もやがては狭隘化することになるであろう。自動化書庫の導入を通過点とし、我々は今後もこの課題に対する方策を検討していかなければならない。
国際基督教大学オスマー図書館 自動化書庫
国際基督教大学オスマー図書館
自動化書庫

学生協働

 近年、大学の構成員である学生と図書館職員が、サービスの利用者と提供者という枠組みを超え、協働して図書館業務に関わる「学生協働」が注目を集めている。職員の指示に基づいて学生が業務をこなすアルバイトとは異なり、学生協働は学生と職員がアイデアを共有することで新たな図書館サービスや空間を生み出している。

 日本の大学図書館における学生協働には20年ほどの歴史があるが、昨今話題となっているのが、お茶の水女子大学附属図書館のLiSA(リサ:Library Student Assistant)の活動である。現役学生の図書館サポーターグループであるLiSAが発足したのは2007年11月。以来、彼女たちは新入生に対する図書館ツアーやカウンター業務、蔵書点検、資料の配架などに従事している。

 LiSAの活動は、「利用者の視点」に基づく図書館サービスの向上という効果ももたらしている。例えば、冬期の膝掛けの貸与は、LiSAメンバーからの提案によるものだったという。こうした取り組みがLiSAと図書館職員に学生協働の有効性を実感させ、更なるサービス向上へとつながっている。

 一橋大学附属図書館では、学生サークル「えんのした」のプロデュースにより、かつての事務室が「えん」に生まれ変わった。展示室の向かいに位置する「えん」は、古本のリユース(学内循環)と学生がくつろげるオープンスペースの提供を目的とする、新たな読書空間である。

 「えんのした」は近年、活動の幅を広げ、図書館内での本の紹介や新入生を対象とする図書館ツアーなどに携わっている。このパネルもまた、「えんのした」と図書館職員の協働作業によるものである。
お茶の水女子大学附属図書館 LiSAの活動風景
お茶の水女子大学附属図書館
LiSAの活動風景
一橋大学附属図書館 サポーターズルーム「えん」
一橋大学附属図書館
サポーターズルーム「えん」
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