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平成23年度 一橋大学附属図書館企画展示
「読書のかたち : 読む行為と空間」

出品資料  (PDF:77KB)

  1. 書物の形態
  2. 音読の世界・黙読の世界
  3. 中世のテクスト
  4. 活版印刷の登場
  5. 再生されるテクスト
  6. 変わりゆく大学図書館
  7. 書見台を使った読書
  8. 映像資料

I. 書物の形態

日本郵船株式会社『金銀出納帳』第7・8期
1891(明治24)年10月2日~1893(明治26)年9月30日

[虎關師錬撰]『錬公聚分韻略』(れんこうしゅうぶんいんりゃく)
[京都]:梅邨彌白 1760(宝暦10)年

太平洋航路を就航した日本郵船の豪華客船(絵葉書)
日本郵船歴史博物館

II. 音読の世界・黙読の世界

レイモン・クノー『地下鉄のザジ』(1959)
Raymond Queneau, Zazie dans le métro.

原文 Doukipudouktan, se demanda Gabriel excédé.
正しい綴りの仏文表記 D’où qu’ils puent, donc, tant? se demanda Gabriel excédé.
意味 「どこからあんなに臭うのか」とガブリエルは苛立って考えた。
原文 «Chsuis Zazie, jparie que tu es mon tonton Gabriel
—C’est bien moi, répond Gabriel en anoblissant son ton.
Oui, ju suis ton tonton.»
正しい綴りの仏文表記 «Je suis Zazie, je parie que tu es mon tonton Gabriel
—C’est bien moi, répond Gabriel en anoblissant son ton.
Oui, je suis ton tonton.»
意味 「私ザジよ、ガブリエル伯父さんでしょう」
「さよう」ガブリエルは上品ぶった口調で答える。
「君の伯父さんだよ」

谷川俊太郎『ことばあそび』より「かっぱ」、1973年。

原文 かっぱかっぱらった
かっぱらっぱかっぱらった
とってちってた
かっぱなっぱかった
かっぱなっぱいっぱかった
かってきってくった
漢字仮名交じり
による表記
河童かっぱらった
河童ラッパかっぱらった
トッテチッテタ
河童菜っ葉買った
河童菜っ葉一把買った
買って切って食った
意味 河童がかっぱらった
河童がラッパをかっぱらった
トッテチッテタ(ラッパの音)
河童が菜っ葉を買った
河童が菜っ葉を一把買った
買って切って食った

3大ギリシア語聖書写本
B.M. メッツガー『ギリシア語聖書の写本:ギリシア語古文書学入門』(土岐健治監訳)教文館、1985年。

 ヴァチカン写本(4世紀)・シナイ写本(4世紀)・アレクサンドリア写本(5世紀)の3点。諸記や福音書・書簡等から構成される聖書は、初期キリスト教の時代にはそれぞれが巻物や小冊子の形態で存在していた。今日のような1冊の聖書として現存し最も有名なのが、この3大ギリシア語聖書写本である。ヴァチカン写本は1475年のヴァチカン蔵書目録にはじめて登場し、現在もヴァチカン教皇庁図書館が所蔵している。シナイ写本は1844年にシナイ半島の修道院で発見され、アレクサンドリア写本はアレクサンドリア大主教(在任1602~1624年)によってイギリスにもたらされたためにその名がついた。現在は2点とも、大英図書館が所蔵している。いずれの写本にも、テクストのなかに一切区切りがない。

「連続記法」から「分かち書き」へ
ロジェ・シャルチエ、グリエルモ・カヴァッロ『読むことの歴史:ヨーロッパ読書史』(田村毅ほか訳)大修館書店、2000年。

 推定4世紀以前に制作されたヴェルギリウス『農耕詩』には、句読点がまったくない。8世紀半ばにフランスのトゥール写本工房で制作された『アウグスティヌス文集』には、「分かち書き」の萌芽が見られる。各文章の間には空白があり、意味的にまとまりのある数語ごとにも空白が設けられている。

III. 中世のテクスト

写字室のジャン・ミエロ
Jean Mielot, secretaire du duc de Bourgogne, traduisant "Les miracles de Notre Dame".

 本展示のポスターおよびパンフレット表紙に使われたのは、写字生・翻訳家・執筆家として活躍したジャン・ミエロの仕事風景を描いたもの。書写台の上段には本が広げられ、これを見ながら書写あるいは翻訳をしていると見られる。下段には羊皮紙が広げられている。右手には鵞鳥の羽根でできた鵞ペン、左手にはペンが摩耗したときに削って尖らせるためのペンナイフを持っている。机の脇に付けられた棚に並ぶのは、インク壷である。

Attribution:
Jean Miélot, secrétaire du duc de Bourgogne, traduisant "Les miracles de Notre Dame". Date: 1456, Source: Paris, Bibliothèque nationale de France, Rights: (C) RMN - Agence Bulloz,
Provider: Culture.fr/collections; France, URL: http://www.europeana.eu/

アウグスティヌス『神の国』 De civitate dei
1489/1490年、一橋大学社会科学古典資料センター所蔵。

 テクストの外見に、中世的な特徴が見られる。テクストは2段組みで、中央寄りで四方を余白で囲まれたわずかな部分が本文、それ取り囲む大部分が注釈である。しかも注釈の文字サイズは本文よりも小さい。採用されている字体はゴシック体とよばれ、全体的に角張って縦のラインが太く、重厚な印象を与えている。

Attribution:
Augustine, Saint, Bishop of Hippo, 354-430. De civitate dei. Comm. Thomas Waleys and Nicolaus Trivet. Venice : [Bonetus Locatellus], for Octavianus Scotus, 18 Feb. 1489/90,
URL: http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/da/handle/123456789/5714

アブルッツォの聖書(14世紀後半)
印刷博物館編『ヴァチカン教皇庁図書館展 書物の誕生:写本から印刷へ』凸版印刷、2002年、66-67頁。

 イタリア中部の山岳地帯アブルッツォにある聖ヴァレンティーノ修道院に秘蔵されていた聖書写本。テクストは2段組みで挿絵があり、装飾頭文字および欄外装飾が施されている。

挿絵は天地創造を描いたもの。左上の円から、第1日目が始まる。

第1日目 神は光と闇を分け、昼と夜ができた。
第2日目 神は水を上部と下部に分け、空を作った。
第3日目 神は下部の水を1箇所に集め、海と大地ができた。大地には植物が茂るようにした。
第4日目 神は空に光を与え、太陽と月と星ができた。
第5日目 神は海を魚で満たし、鳥が空を飛ぶようにした。
第6日目 神は大地に動物を作り、自分に似せて人間を作った。

天地を創造し終えて神が休んだ第7日目の絵は、第2日目と3日目の円の間にいる神の姿で表現されている。

ボルソデステ公爵の聖務日課書(1456~1469年)
内藤裕史『中世彩飾写本の世界』美術出版社、2004年。

 聖務日課書とは、毎日一定の時刻に一定の形式に従って捧げられる教会の公同の祈祷(聖務日課)を記した祈祷書で、美しい彩飾写本が多い。テクストは2段組みで、装飾頭文字および欄外装飾が施されている。

IV. 活版印刷の登場

印刷工がプレス機を使う様子
Engraving of printer using the early Gutenbergletter press during the 15th century.

 1440年代、マインツ(現ドイツ)のヨハネス・グーテンベルク(1398~1488年)によって文字を刻み活字となる金属の角柱、ワイン作り等に使われた圧縮機を改良した印刷用プレス、油を主成分とするインクなど、印刷技術の基本的な道具類が考案された。

Attribution:
Engraving of printer using the early Gutenberg letter press during the 15th century. Date: Unknown (estimate 16th - 19th c), Creator: Unknown, Source: artnet.com, URL: http://www.wikipedia.org/

『42行聖書』 The Gutenberg Bible
1454/1455年。

 『グーテンベルク聖書』の名でも知られる。現存するのは48点で、うち12点は羊皮紙に、36点は紙に印刷されている。この48点のなかでも欠落等のない完全版はわずか20点しかない。初期印刷本には、新しい活版印刷技術と伝統的な写本技術の融合が見られ、むしろ写本を模した側面が強い。『42行聖書』もまさにそうで、テクストの段組み・ゴシック体・装飾頭文字・欄外装飾という特徴を彩飾写本と同じくしており、行間の取り方やハイフネーションが規則的である点を除き、良質の写本とほとんど区別がつかない。

Attribution:
The Gutenberg Bible. Date: [1454, 1455], Creator: Unknown, Description: Mainz,
Source: The British Library, The European Library, Provider: The European Library; Europe,
URL: http://www.europeana.eu/

『百科全書』図版より「横から見たプレス機」1769年。
"Imprimerie, Presse vue par le cô té du dehors," Encyclopédie, ou, Dictionnaire raisonné des sciences, des arts et des métiers. Recueil de planches, sur les sciences, les arts liberaux, et les art méchaniques, avec leur explication , vol. 7.

 初期のプレス機ではいちどに仕上がるのは1ページだが、この図版のプレス機では、いちどに4ページが刷り上がる。 『百科全書』図版より「横から見たプレス機」1769年。
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『百科全書』より図版「印刷作業とプレス機の仕組み」1769年。
"Imprimerie, L’Operation d’Imprimer et Plan de la Presse, " Encyclopedie, Recueil de planches, vol. 7.

 上段の「印刷作業」を描いた図版では、Fig. 1 の人間が印刷用紙を置き、Fig. 2 が活字の並ぶ組版にインクを塗り、Fig. 3 がプレスして印刷している。

 下段の「プレス機の仕組み」は、機械の詳細を伝えている。図にあるPQROの範囲に組版を4つ置き、QSTRに印刷用紙を置き、SVXTの紙押さえを下ろす。次に印刷用紙と組版を密着させプレスすると、4ページがいちどに刷り上がる。
『百科全書』より図版「印刷作業とプレス機の仕組み」1769年。
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『百科全書』図版より「活字ケース」1769年。
"Imprimerie, Casse," Encyclopédie, Recueil de planches , vol. 7.

 出来上がった活字を整然と収めておくケース。組版工はここに収められた活字をひとつひとつ取りだして、1枚の原稿を仕上げていく。パソコンのキーボートと同じで、熟練に伴いどこにどのアルファベットがあるか覚えてしまえば作業効率が上がる。ケースの下段で1部屋が大きく仕切られているのは、使用頻度の高い活字であったと推測される。たとえば、スペース(Espaces)の使用頻度は高く、より多くの活字を必要としただろう。 『百科全書』図版より「活字ケース」1769年。
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『百科全書』図版より「活字ケースの操作」1769年。
"Imprimerie en Lettres, L’Opération de la Casse," Encyclopédie , Recueil de planches , vol. 7.

 右ページ上段の図版は、組版工が活字ケースの前に立ち、活字を組む様子。

 右ページ下段は、活字の組み方を表している。組版工はステッキの右端から活字を並べることで、文字を綴っていく。Fig. 6 のとおりに活字を組み、インクを塗って紙を載せると、ちょうど左ページのとおりに印刷が仕上がる。

Attribution:
Encyclopédie, ou, Dictionnaire raisonné des sciences, des arts et des métiers. Recueil de planches , sur les sciences, les arts liberaux, et les art méchaniques, avec leur explication, vol. 7, 1769.
一橋大学社会科学古典資料センター所蔵
『百科全書』図版より「活字ケースの操作」1769年。
※画像はクリックで最大化されます。

「母型からできたばかりの活字」「ステッキ」「ゲラ箱」
印刷博物館編『プランタン=モレトゥス博物館展 印刷革命がはじまった:グーテンベルクからプランタンへ』
凸版印刷、2005年。150-151頁。

  • 「母型からできたばかりの活字」  活字は凸型であるが、職人は金属を凸型に刻むのでなく、アルファベットを凹型に彫って母型を作り、これに金属を流し込んで凸型の父型を鋳造する。

  • 「ステッキ」  組版工は活字ケースの前に立ち、手元のステッキと呼ばれる道具に活字を並べ、数行仕上がるごとにゲラ箱に移していく。

  • 「ゲラ箱」  活字がステッキにいっぱいになると、組版工はそれをゲラ箱に移し替える。ゲラ箱は1ページの組版を作るためのもので、1ページ分が完成すると周囲を紐で縛って固定する。

V. 再生されるテクスト

ルイス・キャロル『地下の国のアリス』
Alice’s Adventures under Ground , 1886. Virtural Books, British Library.

 『地下の国のアリス』は『不思議の国のアリス』の底本として知られている。1862年7月4日、オックスフォード大学クライスト・チャーチ校で数学教師を務めていたキャロルは、学長の3人の娘ロリーナ、アリス、イーディスたちと川へ遊びに行き、そこで物語を作って聞かせた。アリスはとりわけそれに喜び、物語を書き留めるようせがんだ。
キャロルが挿絵付きで90ページの原稿『地下の国のアリス』を仕上げ、クリスマスプレゼントとしてアリスに贈ったのは、1864年11月26日のことであった。その後、テクストは12,715語から26,211.語に増やされ、ジョン・テニエルによる挿絵が施され、物語は『不思議の国のアリス』として1865年に出版された。1886年には、テクストも挿絵もキャロルによる『地下の国のアリス』の複製本が出版された。

VI. 変わりゆく大学図書館

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VII. 書見台を使った読書

Konstantinos Sp. Staikos, The Great Libraries: from Antiquity to the Renaissance (3000 B.C. to A.D.1600), translated by Timothy Cullen. New Castle: Oak Knoll Press, London: British Library, 2000.

スタン・ナイト『西洋書体の歴史:古典時代からルネサンスへ』(高宮利行訳)慶応義塾大学出版会、2001年。

VIII. 映像資料

高宮利行監修「書物5000年」全13巻、丸善、1999年。

高宮利行監修「書物5000年II:自然科学書は語る」全3巻、丸善、2006年。

ノーマド・フィルム制作「言葉の力、読書の歴史」全4巻、紀伊國屋書店、2010年。

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