ここからメインコンテンツです。

常設展示
大塚文庫

展示
日 程

平成27年12月7日(月)~

場 所 一橋大学附属図書館 展示室(時計台棟1階)
開室時間 10:00~17:00(入場無料)(土・日・祝日・休館日は閉室)

 一橋大学附属図書館では、これまで常設展示として学園史や図書館所蔵コレクションを紹介してきました。展示室改装後、第1回の常設展示となる今回は大塚文庫を紹介します。

※ 【 】内は附属図書館所蔵の請求記号です。

大塚金之助と大塚文庫

 「大塚文庫」は、元東京商科大学教授 大塚金之助(1892-1977)の旧蔵書である。
 大塚は東京府神田に生まれ、1914年に東京高等商業学校(1920年に東京商科大学に昇格:現一橋大学)に入学し、福田徳三のゼミナールで厳しい指導を受けた。 1924年に東京商科大学で教鞭をとった大塚は、「経済通論」などの講義を担当していた。しかし、1933年に治安維持法違反で検挙され、大学を免官となると、13年の間「強制失業」に陥った。 この「強制失業」中の1935年から1940年の間、大塚は人類解放(あらゆる圧迫、迫害、無知、偏見、迷信からの解放)の歴史にかかわりの深い人々についての文章を数々公表した。 これらは岩波新書青版の第1号として1949年に刊行された『解放思想史の人々』に収められている。終戦後、大塚は復職をはたし、1947 年には東京商科大学経済研究所長に就任した。 1956年3月、大塚は一橋大学を定年退職し、同年4月に名誉教授となった。

 当館所蔵の「大塚文庫」は大塚の旧蔵書の洋書コレクションであり、1975年から1976年にかけて受入された。大塚没後の1987年にも多くの資料が当館に寄贈され、その数は最終的に8,205冊におよんだ。 「大塚文庫」は主に社会主義や近代経済学関係の資料から構成されているが、それだけにとどまらない。革命関係や産児制限、婦人問題、世界の文芸など主題は多岐にわたり、多方面にアンテナをはりめぐらせ、 様々なことがらに関心を持っていた大塚自身を象徴する蔵書構成となっている。さらに、大塚の書籍コレクターとしての一面を表すような目録類や索引類に加え、パンフレット類などの一般には入手が難しい資料も収められている。

 一橋大学附属図書館には、上記文庫以外にも大塚を物語る資料が所蔵されている。それらの資料を、当館では「大塚金之助関係資料」として扱っている。大塚金之助関係資料の大部分は、1990年に都築忠七教授(当時) の研究室 (旧大塚金之助研究室)から当館へ移管された資料であるが、その他、大塚会より寄贈を受けたものなどもある。資料の整理は、大塚会と一橋大学後援会より支援を受けて行った。手稿類については一部電子化しており、一橋大学の機関リポジトリ「HERMES-IR Special Collections」を通じてインターネット上で閲覧が可能である。大塚の生涯をたどることのできる貴重な資料がそろっている。
(大塚金之助関係資料については、下記コラムも参照ください。) 



出品資料とその解説


画像:Der Produktionsprozeß des Kapitals‎. -- Volksausg. / herausgegeben von Karl Kautsky.‎Berlin ; Stuttgart : Dietz, 1914. (Das Kapital : Kritik der politischen Ökonomie / von Karl Marx‎ ; Bd. 1, Buch 1‎)【Otsuka M:204:1】

Der Produktionsprozeß des Kapitals‎. -- Volksausg. / herausgegeben von Karl Kautsky.‎Berlin ; Stuttgart : Dietz, 1914. (Das Kapital : Kritik der politischen Ökonomie / von Karl Marx‎ ; Bd. 1, Buch 1‎)【Otsuka M:204:1】

Der Zirkulationsprozess des Kapitals / herausgegeben von Friedrich Engels‎. -- Volksausg. / besorgt von Karl Kautsky ; unter Mitwirkung von Benedikt Kautsky. Berlin : J.H.W. Dietz, 1926. (Das Kapital : Kritik der politischen Oekonomie / von Karl Marx‎ ; 2. Bd., Buch 2‎)‎. 【Otsuka M:209:2】

Der Gesamtprozeß der kapitalistischen Produktion / von Karl Marx ; herausgegeben von Friedrich Engels‎‎ ; T. 1‎, T. 2‎. -- 6. Aufl‎‎. -- ‎Hamburg : Otto Meissner, ‎1922. (Das Kapital : Kritik der politischen Ökonomie / von Karl Marx‎ ; Bd. 3, Buch 3‎)‎. 【Otsuka M:207:3/1-2】

カール・マルクス(1818-1883)『資本論』。(写真はBd. 1 の Der Produktionsprozeß des Kapitals
大塚は本書を読みこみ書抜きノートを作成したが、「第一巻と第二巻とはカウツキーの民衆版」、「第三巻は旧エンゲルス版の新刷」を用いたという。今回展示している資料は、多くの書込みがなされ、ふせんも貼られていることから、この時に大塚が実際に使用したものであると思われる。大塚によると、この『資本論』と『剰余価値学説史』は、「生れてはじめて全力を投じてこまごまと読んだ本であり、ぼくに本の読みかたを教え」た本であったという。



画像:Principles of economics : an introductory volume / by Alfred Marshall. -- 8th ed. London :‎Macmillan, 1920 【Otsuka M:114】

Principles of economics : an introductory volume / by Alfred Marshall. -- 8th ed. London :‎Macmillan, 1920 【Otsuka M:114】

アルフレッド・マーシャル(1842-1924)の著書。大塚は本書を『経済学原理』のタイトルで邦訳、改造社より出版している(1925年)。途中,海外留学により作業が中断されたこともあり、大塚は8年ほどかけて本書の訳を完成させたという。全編にわたりインクや鉛筆での書込みが見られ、翻訳にあたり大塚が資料をよく読みこんでいたことがうかがえる。



画像:Anarchism and other essays / by Emma Goldman ; with biographic sketch by Hippolyte Havel‎. -- 3rd rev. ed. New York : Mother Earth Publishing Association, ‎1917 【Otsuka G:246】

Anarchism and other essays / by Emma Goldman ; with biographic sketch by Hippolyte Havel‎. -- 3rd rev. ed. New York : Mother Earth Publishing Association, ‎1917 【Otsuka G:246】

無政府主義者エマ・ゴールドマン(1869-1940)による著書。神戸高等商業学校生時代、大塚は図書館でこの本を読み、学友会報にゴールドマンを紹介する文章を投稿した。しかし、大逆事件後であった当時当局の反応は厳しく、校長と図書館長はけん責処分を受けた。大塚自身も特待生の資格が取り消しとなった。本書は大塚が後に古書店で購入したものであり、表紙を開いた見返しに、以上の経緯が大塚本人によって記されている。


コラム:大塚金之助関係資料

 大塚が遺した全資料のうち、「大塚文庫」と称される資料以外の資料を当館では「大塚金之助関係資料」として扱っている。これらの資料は、まず10の大分類(刊行物,通信物,印刷物,手稿類,書類,切抜,画像・音声記録,収納,目録,その他)に整理され、さらにそれぞれの分類下で小分類に分けられている。いずれも大塚の人柄をうかがい知ることのできる貴重な資料である。以下に、その一部分を紹介したい。

 「手稿類」の中には、大塚が読んだ書籍についての書抜きノートが含まれている。このなかでも特筆すべきものとして、『資本論』と『剰余価値学説史』について作成されたノートがある。ドイツ留学から帰国し東京商科大学で教鞭をとった大塚は、「教職にある者には、この大きなむずかしい本を読む時間はない」と、睡眠時間を5時間に切り詰めて『資本論』と『剰余価値学説史』を読み込み、書抜きノートを作成した。作成されたノートは、『資本論』8冊、『剰余価値学説史』5冊の計13冊におよんだという。

 また「目録」類には、出版社や書店のカタログのほかに、大塚自身が作成した目録も含まれている。なかでも『INDEX LIBRORUM PROHIBITORUM IN THE PRE-WAR JAPAN; List of books and Periodicals in Prof. Otsuka's Collection』は、第二次世界大戦下で大塚が焼き捨てなければならなかった自らの蔵書の目録であり、ファシズムに苦しめられた大塚の半生を象徴する資料であるといえる。






ここからフッターです。